もっと遠くへ

山が好き。走るのが好き。さぁ、果てしない旅に出よう!

リベンジT.D.T 100mile~完走への道

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T.D.T 100mileとは何か?

何故にリベンジなのか?

そこで何に気づき、何を学んだのか?

このことについては直後に書いたブログを読んでいただくとしよう。 ystiseki.hatenablog.com

昨年、ワラーチ仲間でTDTを見事に完走したNobbyさんが今年のロッテリー(抽選)に推薦してくれたけど、抽選から外れてウェティングリストに入る。自分の前に15人くらいいたと思う。皆さん、仕事や家族もあるから、一年後のその日の都合など分からない。当選しても事情があって走れない人も出るので、例年、ウェティングリストから繰り上がって出走する人がそれなりにいるそうだ。なので十分可能性があるらしい。まぁTDTを走れても走れなくても、100mileを24時間で完走できる自分を目指すことに変わりはない。そのためにDNFで得た気づきと学びをどう活かすかが大事だ。

そう誓ってリベンジへの道が始まる。

と言って特別な訓練をしたりするわけではない。

とにかく走る。

長い距離を只管(ひたすら)走って心と身体を鍛えるのだ。

そもそもなぜこんな超長距離走の世界に足を踏み入れたのか、自分を振り返ってみる。

自分は速く走ることよりも、人間はどこまで長く走れるかに強く惹かれる。

そのきっかけは、ワラーチで走り始めるきっかけでもあった“Born to run”という本にこう書いてあったからだ。

『人間より速く走れる動物はいるけど、人間ほど長く走れる動物はいない』

BORN TO RUN走るために生まれた ウルトラランナーvs人類最強の“走る民族”の通販/クリストファー・マクドゥーガル/近藤 隆文 - 紙の本:honto本の通販ストア

なんてロマンティックなフレーズなんだろう。そして距離を追い求めるランニングライフが始まる。

ランニングを始めたのは今から6年前の48歳、年男の時だ。

初めて出場した大会は千葉のスイカマラソンだった。10km、1時間切りという目標を達成。今となっては何てことのない目標だが、当時は息も切れ切れにゴールしたことを今でも覚えてる。その後は、10マイル、ハーフ(21km)、フル(42km)と距離を延ばす。フルマラソン3時間32分を自己ベストにサブ3.5がどうしても切れない。このまま速さを追及してもしんどいばかりで達成感に欠ける。やっぱり自分は「速くより長く」を追及したい。もっと言えば「長くより永く」だ。80歳になっても走れる自分で在りたいと思う。

目標が決まれば行動あるのみ。ウルトラマラソンの世界に入り80km、100kmとさらに距離を延ばす。

トレイルランと出会ってからは、大好きな山を若かりし頃より楽に速く登れる自分を発見してハマる。やっぱ山がいい。ロードよりトレイルだ。そしてトレイルランも30kmくらいのショートレースからウルトラトレイルランニングの世界へと距離を延ばし、3年前に上州武尊山ウルトラトレイル(128km、30時間)を完走。ystiseki.hatenablog.com

その後はトレイルでの100マイルを目指す。ところが一昨年のUTMFは悪天候で50kmほどに短縮。

ystiseki.hatenablog.com

 昨年の信越五岳は台風接近で110kmに短縮。 ystiseki.hatenablog.com

 不可抗力とは言え、マイラーへの道は遠い。

しかもトレランレースは100マイルともなるとエントリーフィーが3万8千円とかとてつもなく高い!交通費も合わせるとかなりの出費だ。ワラーチ禁止のレースも増えてきた。(信越は今年からワラーチ禁止となる。)レースに出なくても好きな山を好きに登って走ればいいかなとモチベーションが落ちる。かと言って距離を追求する気持ちは変わらず。

そんな経験と折り重なるようにしてジャーニーランの世界へ踏み込む。

始めてのジャーニーランは、2年前の甲州街道“鳥の旅”という非公開のプライベートイベント。下諏訪から日本橋まで215kmを46時間で踏破するという。エントリーフィーは激安。片道は走って帰るので交通費も激安。夜通し走るので宿泊費もゼロ。

しかし46時間も走るって全く想像ができない・・・

仮眠するのかしないのか?

何をいつどう食べる?

全くの未知の世界だった。

まぁ走ればわかるだろうと思い切ってエントリー。

結果は・・・DNF。

途中から左足首の腱鞘を痛めて思うように走れない。痛みも酷くなり180kmほど走った八王子辺りで無念のリタイア。

その顛末については過去ブログに書いた。ystiseki.hatenablog.com

1年後の昨年6月、再び“鳥の旅”を走る。そして 215kmを44時間(仮眠1時間を含む)、無故障で完走した。距離、時間とも自己最長。超長距離走に対する大きな自信を得た。

ystiseki.hatenablog.com

じゃぁ215kmも走れるんだからTDTは楽勝なのか?

決してそうではない。215km-44時間と160km-24時間は別世界なのだ。平均ペースに換算すると、12.3分/kmと9分/km。歩くと走るの分水嶺を跨ぐ。つまりTDTは走らないと完走できない。どちらかと言うと速く走るのがあまり得意でない自分にとってはTDTの方が手強い。初めてのTDTは1時間オーバーでDNFだったが、100マイルの世界では、気合だけで1時間を縮めることなど決してできないのだ。

実は、距離への追及はこれで終わりではない。上には上がある。

世間的にはあまり知られてないと思うが、ジャーニーランの世界にはオーバー200kmのイベントは他にもたくさんある。その中でも知る人ぞ知る“川の道”という毎年GW中に開催されるジャーニーラン(512km、6日間)に、昨年12月に意を決して申し込む。しかし、優先枠(完走者や前年度落選者に与えられる)だけで定員オーバーで、初参加の人が申し込む一般枠は結局選外となった。来年は優先枠で走れる可能性があるが、1年も待たねばならない。

そんな矢先に、なんと”鳥の旅”の第2弾、中山道“風の旅”というプライベートイベントが立ち上がる。日本橋から京都三条大橋まで538km。中山道を4ステージ7日間で駆け抜ける壮大な旅だ。しかも、”川の道”と同じゴールデンウィークに開催されるので他の予定は入れていない。抽選もないので申し込んだら即参加決定だ。

これは挑戦しない手はない。早速、申し込む。

結果はいかに。

一部走り残したので準完走ではあるが、全行程538kmの内の463kmを走りぬいて京都三条までたどり着いた。過酷だったけど、江戸時代の面影を残す宿場と緑豊かな旧道に魅せられたロマンティックな旅。1週間もウルトラマラソンを毎日続けるなんて想像できない世界だったけど、走り終えてみると、"Born to run"のあの一節そのままに、どこまでも走り続ける自分を発見したのだった。

『人間より速く走れる動物はいるけど、人間ほど長く走れる動物はいない』

興味がある方はブログを読んで下さい。

ただし中山道と同じくらい長いので暇な時に・・・ 

ystiseki.hatenablog.com

ystiseki.hatenablog.com

さて、風の旅”を終えてからTDTまで3週間しかない。GWが明けても出走が決まってないし、“風の旅”の疲労も完全に抜けたわけじゃない。このまま出走できなくてもいいかなという気持ちも多少はあった。ところが今年はびっくりするような勢いでウェイティングリストが繰り上がって行く。そして想定外に出走権を得る。正直言うと出走するかどうか一瞬迷った。迷うはずのない自分が迷ってることに戸惑う。“風の旅”から完全にリカバリーしてないのに完走できるのか?  走らない言い訳などいくらでも見つかる。

丸一日経ってようやく昨年の DNF後の誓いを思い返す。やっぱりこれは走る運命なのだ。

出走を決めたらまずはクリーンアップとドネーションだ。クリーンアップは、山へ行く暇がないので近所のランニングコースで。思いのほかゴミがたくさん落ちてる。こういう小さな気づきも大切にしたい。

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昨年の反省点は2つ。

①暑い日の走り出しをややオーバーペースで走ったため、かなり汗をかいた。にも関わらず、水分、塩分、ミネラルの補給が十分でなかった。結果、38km地点で脚が熟成(TDT用語で脚が攣ること)してしまった。その後、100km近く回復せず、大幅に遅れをとった。(100kmも熟成が続くような経験は過去に無く、メンタル的にもかなりダメージ)

②復路、多摩川河川敷を走る頃にようやく熟成が治まり、それなりに走れたが、かなり遅れていたため河川敷を走り始めてすぐに陽が昇る。太陽を遮るものがない河川敷はどんどん気温が上がる。ついに軽い熱中症になってしまった。脚が熟成しても前へ進むことができるが、熱中症は頭が朦朧として前へ進む気力が消失してしまう。ゴールは近いのに木陰にへたり込んでしまった。ここで無理していたらゴールに辿り着くことができなかったかもしれないので、正しい判断だったとは思うが、DNFはやっぱりDNFだ。暑さを避けるために、できる限り早い時間に河川敷に入りたい。

そんな反省点から、今年完走するための作戦を2つ立てる。

①走り出しはペースを抑えること。グループ走と言っても、速い集団、遅い集団がある。集団のペースに合わせて走るのではなく、自分のペースに合った集団と走る。集団と集団の間を独りで走ったって構わない。最強のプロジェクトメンバーが、グループ全体を付かず離れず見てくれているので心配ない。

②水分、塩分、ミネラルを小まめに補給する。ボトルの水は、“いのちのもと”という海水ベースの粉末とクエン酸粉末を溶かしたものにした。 マグネシウムも豊富なので熟成対策にも良さそうだ。

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これで塩分、ミネラルをバランス良く補給できる。甘みが無いので比較的飽きないし胃にも優しい。飽きた時はコンビニの麦茶を飲む。さらに朝夕とマルチミネラルマルチビタミンサプリメントも摂取し万全を期す。

③炎天下を走る時は、水をかぶり気化熱で身体を冷やす。幸いなことに、河川敷のグラウンド横には数多く水場があるので、かぶり水を持って走る必要は無い。

前置きがやたら長くなってしまった。

ついにTDT2018を迎える。

昨年ほどではないが良いお天気で気温は高い。作戦通りに走り出しのペースを抑える。水分、塩分、ミネラルを小まめに補給したので38km地点を過ぎても脚が熟成することは無かった。幸先が良い。

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ペースを抑えたまま69km地点の鉄道公園へ到着。昨年は19:51に着いたが今年は20:08だ。なんと脚が熟成した昨年より遅いとは・・・抑え過ぎたか。

鉄道公園からのトレイル区間もほとんど立ち止まることもなく順調に折り返し地点の高水山常福院へ。

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山を下り鉄道公園に戻る。昨年は1:38に着いたが、今年は0:58だ。この区間は昨年より1時間近く速く走り抜けたことになる。

その後も順調に走る。そして昨年より早い時間に河川敷に到達。昨年は3:05だったが今年は2:24だ。40分ほどの差だが、陽が昇るまでの間にかなり河川敷を進むことができる。

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そしてついに陽が昇る。

昨年と同じ朝陽だけど、今年は希望に満ち溢れてた。

身体はそれなりに疲労してるが前へ進む気力は十分だ。

昨年より早くに河川敷に入ったものの朝9時を過ぎると陽が強くなり気温がどんどん上がる。二子玉川辺りまで来た時にはかなり暑かった。時々、水場で立ち止まり水をかぶる。時間帯もあると思うが、うまい具合に横風が吹いて濡れた上半身を冷やしてくれたので、昨年ほどは暑さを感じないで済んだ。

TDTのご褒美は130km過ぎてからの私設エイドだ。昨年は到着が遅くクローズしたエイドが多かったが、今年は全てのエイドを存分に楽しんだ。どのエイドもホスピタリティに溢れる。言葉を交わし、心のこもった食事をいただいて元気を取り戻す。エイドはパワースポットなのだ。中でも関西人として特筆したいのは「なにわエイド」! 今回初出店らしいが、なんと本格的な焼きたてのたこ焼きをいただける。まさかここでたこ焼きを食べられるとは・・・旨すぎる。

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そして最終のガス橋エイドに到着。

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昨年より断然元気だ。

あと10km!

完走は確実。

炭酸がピリッと刺激的なフルーツポンチをたっぷりいただき出発。

川崎方面のビル群が近づく。ゴールは近い。

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今回、完走したらやろうと考えていたことがある。それは昨年のTDTバンクエット(完走者を讃える祝宴)のポンコツ賞でもらったDNF Tシャツを着て完走し、サロ門の下で脱ぎ捨ててポンコツを返上することだ。

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これがそのTシャツ。

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地を這う骸骨って去年の俺か・・・

サロ門まで200mくらいのところで、ザックに忍ばせておいたDNF Tシャツに着替える。

そしてついにサロ門に辿り着く。

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これにてポンコツ返上。

時刻は10時30分。23時間30分で完走。

ついにリベンジを果たす。

 

<あとがき>

 結局、自分の超長距離走の歴史の総括みたいなブログになってしまった。それは”良い意味で”前回のTDTほどのドラマはなかったということかもしれない。だけど、今回の完走が、自分の超距離走の歴史というもっと大きなドラマの中の記憶に残るエピソードの1つだと自信を持って言える。

そして今回、僕が繋いだワラーチ仲間の誰かが、来年TDTに挑戦することになるだろう。ウェイティングリストの人も、必ず出走するつもりでこれからの1年間準備してほしい。そんな仲間を全面的にサポートしたいし、いつかまた自分が走る機会を得たならば、今回よりもさらに強い走りで完走したい。

それがTDTイズムだと思う。

全て自業自得!

No limits !

アーメン!