もっと遠くへ

山が好き。走るのが好き。さぁ、果てしない旅に出よう!

ワラーチ de UTMF !

  UTMF(ウルトラ トレイル マウント フジ)は名実ともに日本最高峰のトレイルランニングレースだろう。トレランを始めて少しづつ距離を延ばしていく中で、いつしかUTMFを完走することが大きな目標となる。その頃は100マイル、累積標高8千mなど全く想像できなかったが。

  昨年の7月に上州武尊山スカイビューウルトラトレイル125K(YNMC)をワラーチで完走するまでは、UTMFなどまだまだ先のことのように思ってた。 しかし、泥沼に苦戦したYNMCを制限時間ギリギリの30時間、寝ないで完走できた時に、はっきりとUTMFが次の目標となった。

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  UTMFのエントリーが始まって迷わず申し込む。そして0次関門突破。まわりで落選した人も多かったので自分にとっては奇跡のように感じられた。さぁUTMFに向けどんな準備をするか?

この時からUTMFの長い旅路が始まっていたのだと今は思う。

 まずは100マイルという未知の距離にどう向き合うかだ。やはりロードで100マイル以上走る経験を積むことだろう。ロードというのはトレイルとは異なる厳しさがあるので、きっとロードで100マイル以上走った経験は自信に繋がるに違いない。だけどそんなレースはそんなにあるわけじゃない。関東圏では小江戸大江戸200Kくらいか。というわけでエントリーするも慣れないスポーツエントリーでクリック合戦にあえなく敗退。どうしよう(-_-;)

 そんな時、とあるマニアックそうなレース(というより企画に近い)が目にとまる。第1回 甲州街道「鳥の旅」・・・なんじゃそりゃ。募集人員は40名程度。上諏訪から日本橋まで旧甲州街道を中心に215kmを46時間内に走る(歩く)という企画だ。きっとこんな企画に参加する人達はかなりマニアックな人達なんだろう。そんな人達と知り合えるのもいいなと思いエントリー。結果は180kmくらい走った八王子あたりで脚の故障によりリタイア(詳細はこのブログの投稿を参照)。リタイアは残念だったけどロード100マイル以上走る経験ができたので参加して良かったと思う。(来年は日本橋まで辿り着きたい)

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 UTMFに落選した人はまわりに多かったのだけど、どういうわけかワラーチ仲間のユカさん、タルさん、タッキーが当選。聞くところによるとUTMFをワラーチで完走した人はいないという。ならば我々がそれを成し遂げよう!ということになった。

 皆さんウルトラやトレイルの経験豊富なので走力的には完走ポテンシャルがある。なので完走の鍵を握るのはワラーチの耐久性だろう。コンディションが良ければどんなワラーチでも問題無いとおもうが、雨が降ってトレイルが泥沼になると足裏とフットベッドの間が滑りソールや紐に強烈な負荷が掛かる。昨年のYNMCは正にそんなコンディションだった。そのレースを耐え抜いたワラーチならきっとUTMFにも耐えうるだろう。

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そんなわけで自分のワラーチをベースにウルトラトレイル用ワラーチのワークショップを開催し、それぞれの経験や知恵を共有する。このプロセスを経て皆それぞれ納得する自分なりのワラーチを作り準備が整った。

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そして向かえた9月23日 。朝3時半にマイカーで家を出発し、船橋でタッキーをピックアップ、雨の中、河口湖へ向かう。予報では土曜日くらいからお天気は快復するらしい。雨が上がってもトレイルは泥沼になることは容易に想像できるがYNMCを耐え抜いたワラーチなら崩壊することはないだろう。ワラーチに不安を抱えていては完走は遠い。信頼できるワラーチというのは重要な完走条件だと思う。談合坂SAでサポートをお願いしたヒロさんと合流し河口湖へ向かう。

 河口湖の北麓駐車場に車をとめユカさん、タルさんと合流。着替えや荷物の積み替えとかしてると少し晴れ間が見える。やはりお天気は快復か。

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 河口湖到着。スタートの13時まで3時間くらいある。独りで待つのだったらレース前の緊張感が続いて辛い時間だったろうけど、ワラーチ繋がりのたくさんの仲間が集結し、終始リラックスした雰囲気。本当にこれから100マイルも山の中を走るの?

 快復すると思ってたお天気は一向に快復せず雨が降り続く。どうやら富士宮には大雨警報が出てるらしい。そうこうしてるとスタートを2時間遅らせて15時に変更するというアナウンス。中止になるよりはよっぽどいい。スタート1時間前の2時に開会式が始まり人が動き始める。こっちは順位を競ってるわけじゃないし、走る前からあんまり雨に当たりたくもないのでのんびり構えてる。スタート30分くらい前になってからスタートゲートの方へ移動し記念撮影。ようやく走るんだという実感が湧いてくる。

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その時、鏑木さんから重大な発表がある。なんとコースをA3までの50km弱に短縮するとのこと。会場にどよめき。100マイルじゃなきゃUTMFやないやろ。迂回路は無いのか? しかし鏑木さんの辛さに打ち震えた声を聞くとありとあらゆる選択肢を考えたけどそうせざるを得なかったんだということが分かる。気を取り直して50km弱の旅を精一杯楽しむことにする。

  15時スタート。最初の5kmのロード区間を快調に走る。

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トレイルへ入るところで大渋滞。 

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ここが渋滞することは知ってたので、焦ることもなく、ワラーチに興味を示して話しかけてくれる人といつものワラーチ談義などしてるうちにトレイルに入る。トレイルに入っても渋滞は続く。

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トレイルは泥沼にはなってないが土泥でスリッピーな状態。でもワラーチで特に支障はない。足和田山山頂を越え林道を下る。この辺りから路面の泥濘が酷くなる。斜度が大したことないので慎重に脚を運べば十分走れる。まずまずのペースでW1鳴沢(13km)に到着(17:30)。A1まで7kmほどなので補給せず先を急ぐ。かなり暗くなったのでヘッドライトを付け、精進湖への下りのロードを快調に走る。100マイルが50km弱に短縮されたせいか全般的にハイペースだ。

 A1精進湖(20km)に到着(18:24)。おもてなしメニューの「すい豚」をいただくが、長居せず滞在時間2分で出発。フラットな樹海トレイルを抜けパノラマ台への急な山道を登る。スリッピーだが慎重に登ればさほど足を汚すこともない。パノラマ台から佛峠までは緩やかな下り基調のトレイル。泥濘は段々酷くなる。本栖湖への急な下りに入りその酷さがピークに達する。足裏とフットベッドの間に泥が入り滑る。地面とソールも滑るので二重苦だ。急な下りなので足が前方へ持っていかれて鼻緒に大きなテンションが掛かる。足裏がフットベッドから落ちるんじゃないかと思うくらい足が横づれを起こす。しかしこれはYMCAで経験済み。このワラーチは絶対壊れない!という絶大なる信頼感のお陰で、二重苦をギリギリのところで制御し難局を切り抜けた。

 ようやくA2本栖湖(32km)に到着(21:15)。何はともあれワラーチを洗う。ヌルヌルで滑りまくってたフットベッドが復活して気持ちもリフレッシュする。その時、タッキーに声を掛けられる。ユカさんもいる。修羅場をくぐり抜けた戦士の再会のように嬉しい。おもてなしメニューのゆば丼を食べ、ホットコーヒーを飲み、ボトルに水を補給。ゴールはA3ではなく、その手前の朝霧高原の道の駅になったとのこと。残すところ十数キロ。3人揃って出発(21:37)する。

 しばらくロードが続く。激しい雨が降る。時々脚が攣ってペースダウンするがスタミナは十分残ってる。ここでスタミナ切らしてるようでは100マイルなんて走れっこないんだから当然だけど。再びトレイルに入る。バシャバシャと水溜りを駆け抜ける。素足にワラーチの場合、濡れることへの抵抗感は皆無だ。むしろフットベッドを洗えるのであえて水溜りの中を走ったりもする。ロードで先を進んでいたユカさんに追いつき再び3人で走る。その後入った暗闇のトレイルを走ってたら逆走するランナーがいる。どうやら大量ロストらしい。途中でルートやらゴールが変更されたので無理も無い。こんなことになったら順位もタイムも関係ないんだから走りを楽しむだけだ。ロードに戻った辺りでワラーチ仲間の杉さんと合流。残り2kmほど。ここからは4人でゴールの朝霧高原の道の駅へ向かう。ゴール間近でも結構ハイペース。たったの46kmだからね。フィニッシュゲートが見えた。ワラーチ4人揃って奇跡のゴール(23:08)。ランタイム8時間8分。迎えてくれたヒロさんとも喜びを分かち合う。ヒロさん的には限界を乗り越えてヘロヘロになった我々を迎えたかったようだけど、たった46kmなのでみんな元気です。

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こうして僕らの小さなUTMFは終わった。体力的には物足りなかったけど、エントリーからそこへ至るプロセスや本番での悪天候による波乱万丈の時を、たくさんの仲間と分かち合えた経験は何ものにも変えがたいものとなった。だからこそ100マイル走れなかった割には達成感があるのだと思う。

  翌日のSTYはUTMFどころではない波乱万丈のレースになり、それを自分も含めて全力でサポートして、途中でレースは中止になったものの、走った人もサポートした人も一同に達成感を共有できたと思う。

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  今回のUTMFとSTYを通して考えさせられた山と人間との関係について、レース後、様々な意見が交わされている。何が正義であるかなんてわからないけど、人間は馬鹿じゃないからきっと今回の経験を経て良い方向へ向かうと信じたい。

 そして来年か再来年かわからないけど、大きなUTMFででっかい富士山の周りを一周したい。その思いを強くした。

旅はまだまだ続く。

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