The OMM japan 2016 〜信濃の里山に遊ぶ
Orginal Mountain Marathon、略してOMM。
48歳で始めたランニング。ロードに始まってトレランへ。距離も10kmがハーフになりフルになり、ウルトラへ。僕のランニングワールドもどんどん拡張してきたわけだけど、このOMMは新たな領域と言えるだろう。
OMMについての詳細はホームページを見ていただくとしよう。
OMM JAPAN 2016_INTRODUCTION | OMM / Original Mountain Marathon オリジナルマウンテンマラソン Japanオフィシャルサイト
簡単に説明すると、ストレートとスコアの2種目あり、それぞれロングとショートで計4種目。ストレートは決められたコントロール(チェックポイント)を順に辿り、時間を競うレース。スコアは、制限時間内に、できる限り多くのコントロール(難易度に合わせて点数がついてる)を辿り、その合計得点を競うレース。後者はオリエンテーリングに近い。いずれも2人1組でDAY1、DAY2の2日間、テント泊でレースにのぞむ。その間、エイドステーションはなく、テント、シュラフ、食料、調理器具などを全て担いで移動する。1人がだいたい10kgくらいになる。トレランよりも荷が重い。
これがコントロール。腕につけたSIチップを、コントロールに固定されたSIステーションに突っ込むとその時の時刻が記録される。フィニッシュ地点でこの記録を読み出せば、どのコントロールを何時何分に到達したかがわかるというシステム。
Mountainというだけあってレースは山がフィールドだ。山というのは普通は道を歩くもんだが、OMMではほとんどのコントロールが道沿いではなく、道の無い山頂や谷底にあるので、地図とコンパスを頼りに道無き道を突き進んでコントロールを見つけ出す。
※〇の中心がコントロールの位置、括弧の数字が点数。難易度が高いほど点数が高くなっている。
アルプスの様な高山ではなく、山あり谷あり林道あり、複雑な地形をした里山を丸ごとフィールド(遊び場)にした実にダイナミックなレースなのだ。
【DAY0】(11月11日)
スタートが朝早いので前日会社を休んでパートナーの新川さんの車で会場となる鹿島槍スポーツビレッジへ向かう。午前中関東で降っていた雨も諏訪湖に着く頃には上がって青空に。
さらに北上し、安曇野を抜け、信濃大町を過ぎ、ようやく会場へ到着する。
目の前に北アルプスが聳える絶好のロケーション。
受付はトレラン大会と違ってお洒落な雰囲気。その後、寝床へ。
昔懐かしいスキーロッジってやつだ。狭いけど暖房効いてるし全然快適。
夕食前に荷物の再チェック。削れる装備はないか、2人のバランスは取れてるか、もう一度点検する。今回はDAY1の夕方にテント張ってからたっぷり時間があるので、まともな夕飯を作って食べるため食材がかなり重いのと、朝晩はかなり寒くなることが予想されるので寝袋は4シーズン用で重さも嵩もそれなりにある。だが寝食は心身の英気を養うためにとても大切なので削らない。
夕飯はビュッフェ形式だ。ここもなんかお洒落。会場全体がちゃんとデザインされていてOMMのブランドイメージへのこだわりが感じられる。
とてもリラックスできてレース前の緊張感などどこへやら。
明日のために夕飯をガッツリいただいた後は、OMM BARでビールの飲みながらテーブルに貼り付けてあった地図(当然ですがスタート/フィニッシュ、コントロールの位置は書いてない)を肴に作戦会議。
【DAY1】(11月12日)
朝6時起床。
朝食ビュッフェをガッツリ食べていざ出陣。
快晴! 北アルプスが朝陽を受けて輝いてる。爺ヶ岳(左)から鹿島槍(右)までの稜線が美しい。
林道を1kmほど歩いてスタート地点まで移動する。
スタート地点はいくつかのブロックにテープで区切られていて、ブロック毎に順に前へ進み、最終ブロックで初めて地図を受け取ります。ざっと地図を読み、コントロールの位置を確認して方針を決める。そして最終ブロックから1分ごとにスタートしていきます。
ウェーブスタートなのでトレランのような「渋滞」はないものの、狭いシングルトラックを連なって降りていきます。最初からハイペースだと体力消耗するのでちょうどいい塩梅だ。
最初はみんな行動パターンが同じでだいたい同じ方向を目指して進むのでOMMらしさはないけど、いきなり紅葉に彩られた里山の美しさに魅せられてレースなんかどうでもいいという気分になる。
進むに連れて各チームが少しづつ分かれて行く。僕のチームはその後、草に覆われたゲレンデに入った。山道だったらたいがい九十九折(つづらおり)になってるのだが、ゲレンデなので直登。やっぱキツイ。だけど登るにつれ下界の景色が広がって気分爽快。やっと山に入って気持ちが高ぶる。
ここからはいよいよ本格的な地図読みの世界が始まる。OMMらしくなってきた。各チームがてんでバラバラな方向に動き出す。同じコントロールを探しているのかどうかも分からないので後をついて行くなんて気にはならない。お互いどこへ向かっているのかなんて会話をすることもない。
地図読みの基本は、
1)地図上で現在位置を把握すること
2)コンパスの磁北と地図の磁北を合わせて(整地という)進むべき方角を正確につかむこと
この2点を繰り返しながら前へ進む。
コントロールは、地形や木や藪の陰に隠れて離れたところから見えることはほとんどない。目と鼻の先までいかないと見えないことも多い。なので、地図で読み取った地形と目で見た地形を重ね合わせて正確に位置を見定める必要がある。これが読図力でありレースの命運を分ける。トップ選手は走力も半端なく高いが、読図力も半端なく高いのだろう。走力はあるけど読図力が足りないのと、読図力はあるけど走力が足りないのと、どっちが有利か? OMMの場合は間違いなく後者だと思う。迷った時のタイムロスは致命的だ。とても走力でカバーしきれるもんじゃない。もっとも読図力が真に重要なのはレースに勝つためではなく、山で道に迷って遭難をしないためなので、山に入るあらゆる人が身につけるべきスキルだろう。その意味でも読図力を磨くことが走力以上に大切だと思う。
地図を読むために何度も足を止め、じっくりと景色を眺める。静けさの中、風の音、鳥の声が聴こえる。走ってたら出逢えなかった一瞬、歩いていても出逢えなかった一瞬を味わい尽くす。
そうこうしてる内にDAY1フィニッシュ地点に近づく。
北アルプスがお出迎え。
制限時間7時間まで10分を残して無事フィニッシュ!
今日はここで一夜を明かします。
とても明るく広々として素晴らしいキャンプ場だ。
早速テント設営。レギュレーションによりチームで1つのテントを使います。2人で快適に過ごせるテントということで、やや重く1.5kgほどあるがアライのエアライズ2をチョイス。
テント設営を完了したら、何はともあれ日が沈む前に夕飯の準備だ。今回はキャンプ生活を楽しむことも大切な目標なので、ちゃんとした夕飯を作って食べます。いつもは軽量化のためフリーズドライかレトルトで簡単に済ませてばかりだけど、今回は生食材も取り入れてキムチ鍋を作ります。
キムチ鍋の出来上がり。
やっぱ旨い!
秋といえども里山の夜は冬並みに冷える。鍋は身体を芯から温めてくれる。
そして鍋と言えば締めだ。
締めラーメンも最高!
日もすっかり沈み辺りは真っ暗。食後に定番の山スタバ(珈琲)を飲んで夕食終了。
近くでどよめきが聞こえたので目をやるとキャンプファイヤーをやってる。
キャンプファイヤーなんて三十何年かぶりかな。みんなで焚き火を囲む。
焚火の炎を見てると時を忘れる。
そしていつも炎の中に龍を見る。
昇り龍だ。
テントサイトの夜景は、都会のイルミネーションとは異なる趣があってとても素敵だ。
あちらこちらで団欒の声が聴こえて賑やかだ。みんなどんな話をしてるんだろう。
夜が更け気温が急激に下がる。そろそろ寝る時間か。でもまだ20時くらい。寝付けにホットワインをたっぷり飲み干して就寝。
酔っ払って寝たもんで22時くらいに目が醒める。トイレに行く。外はますます冷え込んで寒い。月明かりにテントがぼんやりと浮かぶ。
もう団欒の声はなくテントサイト全体に人々の寝息(いびきも)が鳴り響いてる。静かだけど人間の”息”(生)に圧倒される。こりゃ熊も近づけないだろうな。
その後もなかなか寝付けないままに朝を迎える。
【DAY2】(11月13日)
テントから出てみると凍てつく寒さ。
零下4℃。
まずはモーニング珈琲で身体を温めてアルファ米とフリーズドライで簡単に朝食を済ませたところでテントを撤収、パッキングしてスタートに備える。
今日も快晴。有難い。走れば身体もすぐに温まるだろう。
いよいよDAY2が始まる。
初日が思いの外、調子良かったのでどうせなら順位を上げたいと欲が出る。DAY1同様、直前に地図を渡されて作戦を練る。DAY1の経験があるので地形もだいたい想像がつく。今日はそれなりに走るつもりで野心的な計画を立てスタートした。
前半は調子よくポイントを稼ぐ。相変わらず紅葉の山は素晴らしく気分は上々。
紅葉ばかりに目がいくが、針葉樹の直線美も素晴らしい。
時折、姿を見せてくれる北アルプスの雄姿に心が沸き立つ。夏になったらあそこを縦走したいもんだ。
DAY2の制限時間はDAY1より1時間短いこともあって、あっという間に時間が過ぎた。それまで調子良くポイントを稼いで来たが、どうもフィニッシュ地点までの移動距離と時間を推定すると制限時間内に帰れない可能性が高いことに気づく。ちょっと調子に乗りすぎたか・・・これがOMMの奥深さだな。
それからはとにかく得点より前へ進むことに集中。トレランモードで走れるところはしっかり走る。
ようやくDAY1で通ったゲレンデのてっぺんに到達。眼前に北アルプスを見渡し、眼下に青木湖を見おろす絶景に息を飲む。
ゲレンデを降りたところで時間を確認。時既に遅し。ここからの登りるを考えるとどうしたって制限時間をオーバーすることがわかった。制限時間オーバーに対するペナルティーは1分5 点と重い。とにかく減点を最小限に抑えるべく先を急ぐ。しかし登りに入るとペースが上がらない。息を切らして必死に黙々と登る。ゲレンデの急傾斜を登り切り、最後のコントロールに到達。後はゲレンデを下るのみだ。
北アルプスがお出迎え。
最後の力を振り絞って走る。
そしてフィニッシュ!
制限時間24分オーバー、120点の大減点。
これも1つの経験だ。次に活かそう。そう思えば全く悔いはない。
反省はしても後悔はしないというのがモットーなのだ。
こうして初めてのOMMは終わった。
お山をグルグル廻った2日間の走行距離50km強、累積標高2千m強くらいでした。
帰路の途中でネットでリザルト(暫定)を確認すると、成績は思いのほか良くて完走186チーム中の66位。
DAY1の順位が71位だったのでDAY2で順位を上げだことになる。反省点は多々あれど、よう頑張ったんやとようやく自分達を褒めることができた。
最高に美しく、楽しかった2日間に感謝!
来年はもうちょっと順位を上げたいなどと欲が出るのは人間の性。
OMMは同じ場所ではやらないので来年の開催場所はわからない。あまり遠いところでないことを願うけど、こんなに楽しいレースだったら遠征してもいいかな。
それまで走力、読図力をもっと磨くとしよう。