もっと遠くへ

山が好き。走るのが好き。さぁ、果てしない旅に出よう!

OMM2017〜極寒と極楽の2DAYS

昨年に引き続き2回目のOMM参戦。

OMMとは何ぞやについては昨年の初参戦の時にブログに書いた。

 

ystiseki.hatenablog.com

 

昨年のパートナーの新川さんが仕事で無念のDNSとなりパートナー変更という波乱の幕開け。OMMのパートナーは、走力や地図読み力がある程度バランスして、フィジカルにもメンタルにもお互いに補完し合えること、何よりも2日間、四六時中共に過ごして同じテントで寝泊まりしてもストレスを感じないことが必要とされる。なので誰でもいいというわけにはいかないのだ。そんなわけでなかなか決められずにいたが、パートナー変更期限が迫ってきた頃に濱田さんにお願いすることにした。濱田さんは同じ会社のエンジニアだ。気心は知れてるし、走力もある。しかし、地図読みは初心者!

言ってることとやってることちゃうやん、と思うかもしれないけど、総合的に見て濱田さんならイケルると直感したのだ。実は同じ会社で今は隣の席に座ってるけど一緒に仕事をしたことがない(笑)

 大会2週間前になって、千葉の低山で土砂降りの雨の中、濱田さんにようやく地図読みのレクチャー。

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実際の地形と地形図を見比べてマッチングさせるというのは、エンジニアが実物と設計図を見比べるのと似たようなもの。(自然相手なので実は似て非なるもの・・・)

エンジニアの濱田さんなら基礎的なことはすぐ理解できるはず。あとは場数を踏んで鍛えるしかない。OMM自体が地図読み力を鍛える場でもある。本当に地図読み力が必要なのは、個人で山に入って遭難しないためなんだから、OMMをきっかけに地図読み力を身につけるということでもいいんじゃないかなと思う。実際やってみたところちゃんと読んでる。直感は正しかったことがわかり安心する。

 OMMで地図読みと並んで重要なことはパッキングだ。

OMMの必携装備は、以下のURLの下の方に書いてある。

OMM JAPAN 2017_INTRODUCTION | OMM / Original Mountain Marathon オリジナルマウンテンマラソン Japanオフィシャルサイト

 

レースは2日間。夜はキャンプなのでテントやクッカーなどキャンプ道具が必要だ。同じ2日間でも寝ないで走るウルトラトレイルレースとは趣が異なる。エイドステーションは一切無く、キャンプ場での給水のみ。丸2日分+予備1食の食料を担がないといけない。テント、クッカー、食料など共有装備をうまくシェアして2人の重さがなるべく均等になるように調整する。今回は、地図読み練習の後、カフェで実際の荷物をパッキングして重さを測ってみてどうシェアするかを決めた。2人とも水の食料を入れても10kgは超えないで済みそうだ。

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  これで準備万端。

 

【11月10日】(大会前日)

今年はラン仲間の樋田さん、滝澤さんチームと2組で参戦。樋田さんの車に便乗させてもらい現地へ向かう。高速を降りコンビニで明日の朝の食料を補給する。日没の彼方に雄大な南アルプスを一望する。あの端からこの端まで・・・縦走への想いを馳せる。

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宿にチェックインしてからOMM受付&前日祭の会場へ向かう。OMMの会場は独特の雰囲気を持つ。ブランディングを大切にしてるのだ。

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受付を済ませると、パートナーのどちらか1人の手首には、コントロールに突っ込むと時刻が記録されるSIキーが装着される。レースが終わるまで外すことができないようになっている。お風呂に入る時も付けたままなのだ。オリエンテーラーにはどうってことないのかもしれないが、トレイルランナーには馴染みがなくてちょっと気恥ずかしい。(自分はつけないけど・・・)

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SIチップとは、こんなものです。血圧測ってるみたいでなんだか滑稽。

受付テント内の出店をブラブラと眺がめてまわる。さすがOMMだけあってOMMプロダクトの品揃えがすごい。その上、ディスカウントしてるではないか。

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前から狙ってたULTRA20Lを背負ってみるとなかなか具合が良い。今持ってるULTRA15Lは数々のウルトラレースを共にしてきたので、ピンホールがあったり擦り切れたりしてだいぶくたびれてきてる。こういうところでは買うことはめったにないんだけど消費税も掛からないし衝動買い。1万円也。まさかの散財(^^;)

 

夕食は受付に隣接したレストランでとる。広くていい雰囲気。混雑もなく快適だ。

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テーブルにレースエリアの地図が貼ってある。もちろんフィニッシュ、ゴール、コントロールは記されていない。OMM的には白地図みたいなもの。

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そんな白地図でも、その場所の地形全体を俯瞰できるので貴重な情報だ。食い入るように地図を見て想像を膨らませる。レースはもう始まっている。

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宿に戻って装備の最終調整。床もテーブルも子供部屋みたいに散らかして作業。家と違って誰も文句言う人いないしね。

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天気予報によると、DAY1の朝方は雨だけどその後快復して晴れ。一夜明けたDAY2の朝方の最低気温は0℃。一頃マイナス9℃の予報もあったので、それほど寒くなさそう。防寒対策のため装備がかなり嵩張ってたが思い切って減量することにする。シュラフは4シーズンから3シーズンへ。ダウンも厚めのをウルトラライトへ。雨が降るならキャンプ場で夕食をとるのにタープがわりに使おうと思ってたULツェルトとタープ用の1本ポールを降ろす。それでも9.5kgほどあったので減量前の装備だと10kgは超えてただろう。

 

【11月11日】(DAY1)

予報通り、夜降り始めた雨が朝まで降り続いてる。遅くとも昼前には止むはずなのであまり気にしないでおこう。会場に着く頃には南側の空に晴れ間が広がり雲間から朝陽が射す。良い兆し。

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八ヶ岳側から湧いてくる雲はまだ厚く、雨が降り続く。

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スタート地点は会場から3kmほど離れたところにあるがどこにあるかを事前に知らされることはない。マーキングに従って歩く。歩き始めるとすぐ雨が止む。

南側の晴れ間がどんどん広がっていく。

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雨上がりの冷たく澄んだ空気が気持ちいい。

スタート地点に到着。

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10分ほど前にSCORE LONGの待機ゾーンに入る。地図は、1分間に最前列に並ぶまでは手にすることができない。

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そして1分前に地図を手にしたら、ざっと眺めて全体的にどのエリアを攻めてフィニッシュに辿り着くかの大まかな作戦を立てる。

いよいよスタート!

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いきなり真っ直ぐな林道。トレランならこのまま気持ちよく走り抜けたいところだが、少し先へ進んだところで一旦脚を止める。もう一度地図を見て、最初に狙うコントロールへのルートを決める。

ロード、林道、山道、道無き道(藪漕ぎ)、ルートは無限だ。狙ったコントロールをいかに確実にそしてなるべく早く見つけるか。

コントロールは道沿いにあるとは限らない。

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道沿いにない、山のピークや谷、尾根にあるコントロール(例えば128番)は、地図から地形の特徴を読み取って見つけ出すしかない。その大前提として地図上で自分が立つ位置がわかっていないことには、地図と目に見える実際の地形を比べられない。

”現在地を見失わないこと”

これが地図読みで最も大切なことなのだ。

自分の位置とコントロールの位置が地図上でわかれば、コンパスを使って方向を定め、アプローチしやすい斜面を選んで前へ進むのみだ。最短で一直線に進んだって構わない。道が無いと言っても秋の信州の低山は、背の高い藪はそんなに多くないので、十分に歩ける。道を歩くよりむしろ気持ちがいいくらいだ。落ち葉を踏みしめ、藪を掻き分け、道無き道を進んでると身体に眠っていた野生が蘇る。

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こうして狙い通りにコントロールを見つけたらSIチップを差し込み到達時刻を記録する。

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子供が宝物を見つけた時みたいに嬉しい。

そう、OMMは”大人の宝探しごっこ”なのだ。

こんなことを一日中繰り返すわけだが、その間、様々な表情を見せてくれる美しい山々に魅せられる。なんと贅沢な遊びなんだろう。

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こうしてDAY1を終える。

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<DAY1リザルト>

獲得ポイント320点(29位) 時間6:07:20(制限時間7:00:00)

思いのほか好成績。

移動距離32km。ちょっと走りすぎ。

 

テントサイトは広大な牧草地。

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 まだ4時前だが太陽が今にも沈みそう。まずはテントを張る。昨年と同じアライのエアライズ2だ。樋田さんチームのテントに隣接してテント本体を広げる。次にテントを立てようとポールを取り出したその瞬間に唖然とする。なんとポールを間違えた。雨の時にツェルトをタープがわりにして立てるために持ってきたタープ用の一本ポールではないか。どうやら昨夜、宿でザックを減量した時に間違えてテントポールを降ろしてしまったようだ。なんたる失敗。皆んなの知恵借り、手伝ってもらってなんとか一本で立ったけど、路上生活者のテントみたいでなんだかみすぼらしい。

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ショックで気が滅入るけど、なんとか寝床を確保したので良しとするしかない。

気を取り直して夕飯の準備開始。

今宵の夕飯は4人で鍋と焼肉!

肉やら野菜やら生の食材は嵩張るし重いけど、寒いキャンプを楽しむためには削れないのだ。

第一弾はスンドゥブチゲ。

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 あっという間に食べ尽くす。

締めラーメンをぶち込んで汁も飲み干す。

次に焼肉。旨すぎるぅー。一日中、山の中駆けずり回って身体を削ったのでタンパク質が身体に染み入るようだ。

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そして再び鍋。今度は濃厚白湯鍋だ。

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もちろん締めはラーメン!

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これでかなりお腹が膨らんだのだが、最後にまた焼肉食べてとどめを刺す。

贅沢な晩餐会が終わる。

周囲は無数のテントの灯りが重なり合って幻想的だ。これもOMMの風物詩の一つ。

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急激に気温が下がり、外にいるのが耐えられなくなってきたのでテントに潜り込んで早々に就寝。

エアマット、3シーズンのULダウンシュラフに、必携装備のエマージェンシービィビィを重ねる。外で長々と夕飯食べて身体が冷え切っていたせいか最初は寒かったけど、体温が戻ると段々とシュラフの中が温かくなる。後になって知ったのだけど、明け方の最低気温はマイナス10℃だったらしい。まさかそんな極寒になると思わないで軽さ重視で選んだ装備だけど、意外とイケることがわかった。こういう経験値はこれからの登山で役に立つ。

 

【11月12日】(DAY2)

朝4時過ぎに起床。まだ暗い。DAY2のスタートまで約2時間。ULTRA LUNCHのビバークレーションとコーヒーでサクッと朝食を済ませて外へ出る。寒いを通り越して痛い。少しの間、外に出しておいたプラティパスの水があっという間に凍り始めてる。マイナス10℃の世界に驚く。

薄明が段々明るくなり、刻一刻と空の色が変わっていく。

マジックアワーだ。

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そして陽が昇る。

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もの凄いパワーだ。

振り返ると赤く照らし出された八ヶ岳のモルゲンロート。

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この一瞬、ここにいる幸せを噛み締める。

 

のんびりしてる時間もなく、テントを畳みバッキングを済ませる。 

そしてDAY2スタート!

DAY1は遠いコントロールを狙って距離的に走り過ぎたので、今日は抑える作戦。と言いながらもDAY1が29位と思いのほか順位が良かったせいで欲が出る。結局のところ、遠くのコントロールを取りに行ってしまう。その結果は・・・それは後程。

 

朝陽に照らし出された野辺山の絶景を見ながら上機嫌で前に進む。

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 遠くの山々の陰影が印象的だ。

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 木漏れ日の中、地形を頼りに道無き道を進む。道無き道と言っても、この季節なので背の高い草は無く、とても歩きやすい。

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 順調にポイントを稼ぐ。

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僕の前に道はない。

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僕の後ろにも道はない。

道は、今、ここにある自分の一歩だけだ。

 

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時折、八ヶ岳が姿を見せてくれる。 

青い空。

モノトーンの山。

黄金色に輝く木々。

美しい景色に脚を止め息を飲む。

 

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 歩きやすいところばかりではない。こんなイバラが茂ってたりもする。山道を進むなら素足でワラーチで行きたいところだが、道なき道を行くとなると、藪の中や落ち葉の下に何が潜んでるかわからない。足を傷つけないよう全体を布で覆う必要がある。なのでワラーチは封印しシューズを履く。今年は準備が間に合わなかったけど、作業用の足袋もいいだろう。

 

途中でコントロールを深追いし過ぎたことに気づく。悠長にコントロールを探してたら制限時間に間に合わない。とにかく道を使ってフィニッシュ地点に戻ることを最優先にする。

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延々と続く登りに辟易しつつも、木々の美しさに癒される。

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苔むした岩から滲み出る清水で水分補給。

八ヶ岳は水が豊かだ。

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峠のてっぺんで遠く富士山が突然御姿を現す。どこから見ても富士山の存在感は圧倒的だ。

ここからは下り。

制限時間には間に合いそうもないが超過時間を少しでも短くするためにも走る。1分超過したら5点の減点。せっかく稼いだポイントが湯水の如く消えていく。

道沿いにあるコントロールで消えていくポイントを補充しつつ、トレラン並みに激走して下る。

そしてフィニッシュ!

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<DAY2リザルト>

獲得ポイント185点(235位) 時間6:12:25(制限時間6:00:00)

13分超過して65点の減点。痛っ!

移動距離30km。よう走ったわ。

<総合リザルト>
獲得ポイント505点(131位) 

時間12:19:45

 

またしても昨年と同じ過ちを繰り返し、2日目で大幅に順位を落としてしまった。

地図が読めても、走れても、距離と時間のマネジメントができないとダメ。これは登山でも同じこと。まだまだ実力不足ということで、来年に乞うご期待!

 

フィニッシュ後は会場でプチ打ち上げ。ドライバーさんには申し訳ないけどビールが美味過ぎる。

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 こうしてOMM2017の幕が降りる。

完