耕さない田んぼ(その1)
昨年、生まれて初めて米作りを経験した。
なんと言っても米は日本人の主食。
いつからだろう?
「食える」が「お金を稼げる」ことを意味するようになったのは・・・
主食を作れるって「食える」の原点だと思う。
たった1畝のちっぽけな区間で、たったの23kgしか採れなかったけど、それでもお米を自分で作れたってことは意義深い。
本気で米作りを学びたい。
そんなわけで、今年は本格的に勉強するため、地球の仕事大学の「耕さない田んぼ学部」を受講することにした。
3月2日はその第一回目でした。
講師は五十嵐先生、鳥井先生のお2人。
五十嵐先生については↓
鳥井先生については↓
お二人共、数少ない、そして貴重な自然農の稲作の伝承者であり実践者だ。
何故、耕さないないのか?
耕さないことで田んぼが多様な生き物の住処となるからだ。田んぼが、プランクトン、イトミミズ、昆虫、鳥などの生き物と多様な植物が持ちつ持たれつ(食物連鎖)の一大生態系となる。その生態系を活かして稲を育てるのが「耕さない田んぼ」だ。
生態系がまずあって、お米はそこからの授かりもの。
つまりは人間も生態系の一部ということだ。
農薬も肥料も人為だから加えない。
その必要が無い。
基本的な考え方は、故岩澤信夫氏の冬期湛水・不耕起移植栽培に基づく。
しかしながら、稲にとって最適な条件は田んぼによって異なる。近頃ありがちな「誰でもできる無農薬の米作り」みたいなマニュアル(方法論)の無い世界。教えてもらったことを鵜呑みにせず、何故そうなるのかをよく観察し、その田んぼに適した育て方を見出すのだ。
例えば、農薬で雑草を殺すのでは無く、雑草が芽吹かない条件を用意するなど。言うは易し、行うは難しだけど。
自己紹介タイムの後、実習の場となる田んぼを見に行く。
谷津田だ。
谷津田については↓
谷津田は昔から水源地であり、様々な生き物や植物の生息地だったのだ。
「耕さない田んぼ」をやるためには水が自由に使えることが条件となる。平地の田んぼは農家さんが水源を共同管理してるので自由に使えない。なので平地ではなく山間部の谷津田になる。谷津田は、場所的に不便だし、小面積なので生産性が低い。真っ先に休耕田になる。そんな谷津田を「耕さない田んぼ」として再生することは、水源地と生態系の復活に繋がり社会的意義も大きい。
まぁそんなことはさておいて
谷津田の景色は気持ちがいい。
部屋に戻って稲作の歴史を学ぶワーク。
縄文から弥生時代へ移る頃に九州で始まった稲作が徐々に東北へ広がっていく。気が遠くなるような年月を重ね、その土地や気候に適した稲が選抜されて反当たりの収量は徐々に増えていくが、自然任せの極めて緩やかな変化だったろう。
畜糞や人糞などの有機肥料を使い出したのは江戸時代から。この頃の収量でも反あたり3俵しかない。
農薬、化学肥料、機械化などが普及したのは第二次世界大戦後。生産性が急速に高まり1985年には反当たり8俵へ。バイオテクノロジーでさらに収率が上がっていくのだろうか?
マネー資本主義経済偏重の時代の中で、生産性を追求すればするほど、田んぼは生態系からどんどん分離していき、そして生態系を壊す。
「農」とは、生態系の繋がりの中で人間が生きて行くために必要な資源を得ることだったはず。
では農薬も肥料も使わない「耕さない田んぼ」は江戸時代以前の収量に逆戻りかというとそんなことはない。8俵くらいとれる田んぼもあるというからびっくり。これは品種改良の成果だろう。その代表格が誰もが知ってるコシヒカリ(1956年品種登録)だ。
それにしても、
8俵とれたら充分じゃねぇの?
だって田んぼはどんどん減ってる。米の年間消費量のピークは1963年だ。田んぼを減らして収量を上げるくらいなら、収量増やさなくてもいいから田んぼが増えた方がいい。
生態系あっての人間なんだから。
国民皆農で休耕田を復活せよ!
農に関わればみんな健康になって医療保険も老齢年金も健全化するだろう。
さて、歴史を学んだ後は、種籾の選別についてだ。
種籾の比重にはバラツキがある。そして重い籾の方が軽い籾より成長力が高い。重い籾と軽い籾が隣り合わせだと重い籾が栄養分を独り占めして軽い籾の成長がさらに悪くなる。重い籾と軽い籾を選別してそれぞれがバランス良く成長した方が全体の収量は上がるというわけだ。
農協やホームセンターで売ってる種籾は比重1.13で選別されている。それを前提に比重1.15で重い籾と軽い籾に選別する。
どうやって選別する?
塩水だ。水に塩を混ぜてかき混ぜると比重液ができる。
どうやって比重を測る?
比重計があればいいが一般的なものじゃないのでわざわざ買うのも面倒。そこで登場するのがなんと生卵だ。塩水に生卵を浮かべて水面より上の部分と水面との境界の円が500円玉の大きさなら比重1.15。円が大き過ぎるなら水を加える。小さ過ぎるなら塩を加える。生卵だったらすぐに手に入るし使い終わったら食べられる(笑)
比重液ができたら網袋に入れた種籾を袋ごと沈める。浮いた籾を掬い取って別の網袋に入れる。
この後、種蒔きに備えて水に10〜20日ほど浸しておくのだが、これについてはその理屈も合わせて種蒔きの時に書くことにする。
今回のまとめ。
100の田んぼがあれば100のやり方がある。
それは生き物や植物が教えてくれる。
答えはその田んぼにある。
何度も試行錯誤してそれを見つける。
それが「耕さない田んぼ」
To be continue.